がんが疑われたらどんな検査をするの?

ある時ふとペットのからだを触っていたらしこりが…

そんな時はあまり様子を見ずに病院に行きましょう。

病院に行くと痛いことされるんじゃないかと心配になる方もいらっしゃると思うので、病院ではどんな検査をしていくのかお話しします。

ちなみに皮膚など目に見える部分にあるしこりは飼い主さんや、トリマーさんが見つけて病院に来ることが多いですが、お腹の中や胸の中、血液系のがんは調子が悪くなってから見つかることも多いです。

人と同じようにペットも早期発見、早期治療が基本ですので、歳をとったら定期的に健康診断を受け、外から見えない内臓のチェックをしてもらいましょう。

ちなみに、血液検査でいろいろわかると思っていらっしゃる飼い主さんも多いですが、がんを発見するには、触診やレントゲン検査、エコー検査をしていく必要があります。

問診

まず獣医師は飼い主さんからお話しを聞きます。

どんなことを聞かれるかというと…

しこりの場所

いつからあるのか?

しこりのサイズや見た目は変化あるか?

痛みはありそうか?

今まで何か検査を受けているか?

今まで治療を受けたことはあるか?またその治療に反応して小さくなっているか?

今までがんを取ったりした既往歴はあるか?

基礎疾患があるか?

触診(視診) 

基本的には痛みなし(骨の病変などは痛みを伴うことがあります)

触診とは実際に獣医師がしこりを触ったり、リンパ節を触ったりすることです。

皮膚のしこりは直接触れますし、お腹の中のしこりも全てではありませんが、よく触るとわかることもあります。

胸の中のしこりは流石に触ってもわかりません。

お口の中はお利口にしてくれる子でしたら見れますが、どうしても噛んでしまうような子の場合にはお薬を使った麻酔や鎮静処置が必要です。(獣医師は動物の取り扱いには慣れていますが、手を噛まれてしまうと仕事が出来なくなってしまいますし、神経的な麻痺が出てしまうと手術も出来なくなってしまうので、ご理解ください。)

どんなことを見ているかというと

  • どこから発生しているのか?
  • 何センチあるか?(定規で測って治療反応をみる時にも参考にします。)
  • 周囲の組織とくっついているか?
  • 柔らかさや硬さは?
  • 周りのリンパ節は腫れていないか?

細胞診検査

ちょっとだけ痛い

細胞診検査は細い針でしこりを刺し、しこりの中の細胞をごくわずかにとってくる検査です。痛みはワクチンなどの注射の時と同じぐらいです。

しこりは見た目だけでは、悪いものか悪くないものかわかりませんので、基本的にはこの検査をすることが多いです(もちろん状況によって、例えば肺のしこりや甲状腺のしこりなど、播種が懸念される場合や出血リスクが高い場合にはやらない場合もあります)。

パパッと顕微鏡で見て、問題ないしこりとわかることも多いですが、場合によっては臨床病理医という細胞を見る専門の先生に検査を出して診断書を書いてもらう場合もあります。

細胞診検査では、非腫瘍性病変(炎症、過形成)なのか腫瘍性病変なのか?

腫瘍であれば、良性?悪性?どう言った系統の腫瘍なのか?といった情報が得られます。

すなわち、この検査によりあまり気にしなくても良いしこりなのか、あるいは治療が必要なしこりなのかということがある程度わかります。

レントゲン検査

基本的には痛みなし(やはり骨の病変などはポーズにより痛いことがあります)

レントゲン検査は、しこりがある局所の状態を把握する目的(例えば、骨が溶けていないかとか)と他の臓器に転移がないかチェックするためにする検査です。

しこりがある局所のレントゲンを撮影するかは、患者さんによって異なります。

一般的に「がん」は肺に転移することが多いので、ステージングと言って今「がん」がどこまで進行しているかを確認するために胸部(肺)のレントゲンを撮影することが多いです(「がん」の種類によって転移しやすい部位は異なりますので、例外はあります)。

猫のレントゲン検査のイラスト

超音波検査

基本的には痛みなし

しこりの局所の状態を見る目的と、リンパ節や他の臓器に転移がないかを見る目的で実施します。

もしリンパ節などが腫れている場合や他の臓器に転移が疑われる場合には、転移がないか超音波ガイド下で細胞診検査を実施することがあります。

ちなみに、このような検査で偶発的にしこりとは関係ない、別の病気が見つかることも結構あるんです。

組織生検

痛みあり(鎮静や局所麻酔、全身麻酔が必要)

細胞診検査で診断がつかない場合には、しこりの正体を明らかにするためにしこりの一部を検査用に取ることがあります。

細胞診検査より診断精度が高いです。

基本的には診断が一度でつくことが多いですが、腫瘍細胞は取れず、腫瘍の周りの炎症の部分だけ取れてきたりして、取ってくる部位によって診断が変わってしまうことがあります。

そのため、獣医師が臨床的に腫瘍を強く疑っている場合に、それとは反する結果が返ってきた場合には、何回か検査を繰り返すことがあります。

CT検査、MRI検査

基本的には痛みなし、全身麻酔が必要、費用がかかる
場合によっては検査ができる施設に紹介してもらう

場合によって、さらに進んだ画像検査をすることがあります。

これはしこりの局所を見る(どこから発生しているか?どのくらい浸潤しているか?血流はどうか?手術をする場合には手術計画に役立つなどなど)、転移がないか見る(転移をしていたら手術適応にならないことがあります)目的で実施します。

まとめ

これらの検査をどこまでする必要があるかは、獣医師が判断します。

検査の結果によって、しこりの正体、浸潤の程度、転移の有無が分かります。

これにより適切な治療を選択することになります。